経営革新会8月定例会の記録

1.日時 平成24年8月30日(木)15時~17時
2.場所 サンパル7階 ひょうご産業活性化センター ビジネスプラザホール
3.プログラム
  (1)講演1:「今後の金融行政 変化する金融機関の融資」
           ~モラトリアムの出口戦略~
           総務・経営コンサルタント 当法人会員 外口 治氏

  (2)講演2:「中小企業を元気にするワーク・ライフ・バランス経営」
OfficeG&C代表・仕事術ナビゲーター/
ワーク・ライフ・バランスコンサルタント 中山 正人氏

4.参加者   産業人0Bネット 賛助会員8名、個人会員22名、
ひょうご産業活性化センター3名、講師関係者3名   計36名

外口 治氏

外口 治氏

 
交流会の様子

交流会の様子

 
中山 正人氏

中山 正人氏

 

(1)主な講演内容

①講師の自己紹介

みなと銀行で24年間融資業務に携わり、5年前に退職。現在総務・経営コ ンサルタントで、企業の資金調達のお手伝いをしている。バブル崩壊後の企業再建業務に関与してきた。6社の財務アドバイスをしながら、再建問題で23の金 融機関と3年半話し合いを続けた。その金融機関とのバンクミーティングも終わりに近づいている。

②今後の金融情勢について

A.金融機関の収益体質の強化
金融機関は、H25年3月のモノトリアム法案廃止を控え、収益の改善に邁進している。資金は潤沢で融資額は増加したが、企業にいかず自治体、被災地に向かっている。金利を引き上げ、住宅ローにもいっている。企業向けは、お金が絞られ、マイナスになっている。
B.デフレ脱却にむけての融資金利の引き上げ
これからは、デフレ脱却を目指し、金融機関の金利が上がっていくと予想される。

③変化する邦人金融機関の融資動向

A.国内から国外へ
欧州危機に伴い、欧州の銀行が東南アジアを中心とした新興国向けの営業を縮小または撤退した。東南アジアに活路を求める邦銀は、新興国向けの融資の増強を行っている。欧米の東南アジアでの合弁銀行を言い値で買いあさっている。従って国内での金融緩和は起こらない。
B.中小企業から自治体へ
銀行が自治体向けの貸し出しを伸ばしている。自治体が国から民間に資金を借り換える制度を利用し、銀行も貸し倒れリスクの小さい自治体向け借換融資を積極的に手がけている。
C.企業融資から国債などの債券投資へ
銀行は資金を企業融資に回さず、国債などのリスクの少ない債券に投資している

④モノトリアム法案がH25年3月31日で廃止に

A.懸念される事象
(ⅰ)制度適用先の破綻に際しては、政府が保証(つまり税金で、国民負担)
H23年9月末でグレーゾーンの不良債権が44兆円あったが、これが倒産によりH24年3月末では4兆円消え、40兆円になっている。
この4兆円は、国民負担である。
(ⅱ)条件変更のままでは、銀行は引当金の積み上げで赤字になる可能性大
正常債権の貸し倒れ引当金は0.25%、要注意債権は5.9%、要管理先は、59.2%で、これが増加すると資本増強を求められ、銀行は赤字に陥る。収益を上げるため株、国債売却や海外進出がおこる。
(ⅲ)不良債権の圧縮は貸し剥がし、貸し渋りに直結
H25年3月を控えて、銀行は収益向上のため、中小企業貸付の貸し剥がし、貸し渋りが起こる可能性が高い。

B.打ち出された対策
(ⅰ)ひょうご連携制度融資の設置(H24年4月Ⅰ日制度ができた)補償限度額:2.8億円(無担保8000万円、一般2億円)、保証期間:15年、保証:兵庫県信用保証協会の制度である。8月になって案内しても、すぐに使えるものではない。
別に兵庫県中小企業融資制度に「借換資金の借換貸付」がある。
限度額:1億円、利率:1.85%、保証期間:10年の制度である。
銀行は、むしろこの制度を利用するのではないか。保証協会の融資は、倒産した場合、協会80%、金融機関20%が負担するのでリスクはある。保証協会の信 用扱いで15年はムリ、この種の融資はほとんど10年位で落ち着く。制度があるからといって必ずしも使えるものではない。
(ⅱ)企業再生機構の活用
兵庫県の実績では、スタッフ8名(うち事務職2名)、過去4年の実績は20件程度である。金融庁から更なる案件の処理を要請されている。金融機関は、企業 再生機構に確認された再生計画書に提示された債務者を準正常先にみなしたいこともあり、企業再生機構の役割は重要になってきている。         
(ⅲ)銀行にコンサルタント機能の要求
銀行の貸付業務は上席者の仕事で、製造業、サービス業によってコンサルの仕方が違う。その人たちは団塊の世代で退職したので、今は銀行の関連会社がアドバ イス業務をしている。銀行にはコンサルのできるスタッフは少ない。今後は、人材派遣や内部監査を強化し、内容の把握に努めることになる。

⑤まとめ

H25.3.31のモノトリアム法案の廃止が迫っているので、資金繰りは前倒しに、充分な対処を願いたい。
特に資金に余裕のない企業は、できるだけ早め早めに対応をお願いしたい。

 

3.講演2: 「中小企業を元気にするワーク・ライフ・バランス経営」
OfficeG&C代表・仕事術ナビゲーター/
ワーク・ライフ・バランスコンサルタント 中山 正人氏
(1)主な講演内容
①講師の自己紹介
    26年間会社勤務の経験あり。合繊メーカーの労務屋からスタートし、その後
    2社に勤め、人事、経営企画を経験した。今54歳で、企業の研修の支援
    中心の仕事をしている。最近はホワイトカラーの生産性問題に取り組んでいる。

②ワーク・ライフ・バランスとは

A.1990年代にフォード財団が始めて言い出した。

本来の目的は企業を強くすること、それを実現する手がかりをつかむことである。それがあたかも私生活を楽しむこと、子育て支援、育児休暇、介護休業 と福利厚生施策のように誤解されている。それは本質的に間違っている。私は仕事と生活はあたかも秤(はかり)の両方に乗っている錘
(おもり)のようなものだと思う。両方ともバランスを取って少しずつ重くし、豊かにしていくことだ。
仕事が悪くなると生活のほうも必然的に悪くなる。今日はワーク・ライフ・バランスとは何か、その背景はどうなのか、これは企業生き残りの手段であるという順序でお話をしていきたい。

B.ワーク・ライフ・バランスの背景 

(ⅰ)さまざまな下記の社会経済状況の変化がある
・国、地方公共団体の施策、法律
・経済状況(デフレ、円高、倒産、売上の低迷)
・技術(IT化、国際化、技術の進歩と発展)
・社会(少子高齢化、失業、男女平等、育児、介護の重視)
(ⅱ)特に高齢化し減少する労働力人口は長期的な問題である
2030年の予測では人口構成は釣鐘型になる。2018年問題としてこの年は出生人口が100万人を切る。人は希少で高価になり、企業の財産になる。シニア、女性の活用も課題になる。
(ⅲ)ヒトは価値の源泉で時間、情報、モノ、カネの5つが経営資源の中心すなわち「ヒトがモノを作り出し、カネを生む」「ヒトが情報を発信し、収集し活用する。」「有限で共通な時間を使うのもヒト」

③企業における人の働き方

A.これまではエース依存型⇒これからは組織型

(ⅰ)エース依存型は2割のエースがいれば企業はうまくいく
しかし3つのリスクを抱える。(燃え尽きリスク、介護リスク、見えない化リスク)
(ⅱ)組織型は、組織メンバーで負荷を分散・協働することにより、組織力が向上する。エースに頼らず、8割の平均的な人材で10割を稼ぐ。

B.働く人の価値観の変化

 (ⅰ)仕事と生活の両方を重視する人が8割強
   震災の影響もあり家族との絆を重視する人が増えた。
 (ⅱ)仕事に意欲的な女性が増加
  a.「自分には仕事を通じてかなえたい夢があるか」のアンケート結果は、2011年に女性73.4%、男性70.5%で、はじめて男女比率が逆転した。
  b.海外勤務についても女性のほうが意欲的である。
   (ⅲ)大企業各社トップの考え方も変化している

  • IKEA:8時間以上働くと疲れて仕事に集中できなくなるから、長時間勤務はやめるべし。
  • 帝人 大八木社長:男性がだめなら女性を活用すべし。
  • キリン 三宅社長:朝から晩まで仕事をやっていたら、いい仕事を続けられない。
  • 経団連:ワーク・ライフ・バランスは、推進すべし。

こんな声が強くなり、仕事のやり方を工夫しての見直しすことが始まっている。ある調査では企業の中で探し物に費やす時間は年間で160時間(20日)というデータがある。整理・整頓などの 5Sは大切である。

④ワーク・ライフ・バランスとの本質は生き残り戦略

 (労働力減少時代・グローバル競争時代を生き残るために)

A.誤解を招いているワーク・ライフ・バランス施策

  一般に次の施策そのものが、ワーク・ライフ・バランスと思われている。 その施策の目的は何かを考えることが大切である。

  • 育児休暇、介護休業
  • 短時間勤務制度、在宅勤務制度、フレックスタイム制度
  • 有給休暇取得促進、ノー残業デイ

B.ワーク・ライフ・バランスは大企業だからできる

中小企業はそんな余裕はないとよく言われる。余裕とは「時間の余裕」、「お金の余裕」、「人の余裕」か
その気になれば中小企業でも必ずできる。できないのは全て「いいわけ」。
いろいろな業種の中小企業で、ワーク・ライフ・バランスに取り組み、成果をあげた先行事例がある。

⑤ワーク・ライフ・バランスの実現に向けて

 A.生産性(業務の効率性、業績に直結)とワーク・ライフ・バランスは、車の両輪で、どちらが先ということはない。ニワトリとタマゴの関係。
 B.業務の生産性を上げるための方程式
方針・考え方×しくみ×知識 ⇒ 成果 ×スキル
方針・考え方:トップの明快な方針、実現するまでしつこく言う
しくみ:業務管理のしくみ、会議、マネジメント情報交換会
知識:考える力、段取りする力、見える化力、時間活用力
C.まとめ
(ⅰ) ワーク・ライフ・バランスの本質は、経営戦略の実行である。
(ⅲ)残業削減は、コスト効果あり、経営にもプラスになる。
(ⅱ)例えば採用対策、人材育成対策、定着性対策に力を入れる。しかし入者社後3年でやめられたら、その社員にかけた経費600万円はムダになるとの試算がある。この例のようにならないために、社員を育て、生かすことが肝要である。
以上
(久留島 正)