これからの中小企業の進むべき方向

定例会におけるセミナーの記録
1.日時
平成24年1月11日(水)15時30分~17時
2.場所
サンパル7階
ひょうご産業活性化センター
ビジネスプラザホール
3.プログラム
「これからの中小企業の進むべき方向」
(1)講演:ひょうご産業活性化センター
理事・総括コーディネーター
吉岡昭一郎氏
(2)パネルディスカッション:NPO法人
産業人OBネット
進行
後藤邦彦氏
パネラー
大森康宏氏 角谷一明氏 梶原信也氏 佐野鉦治氏 野田浩志氏
4.参加者
50名
講演内容:「中小企業の存続、発展策について」

1.「成長期待企業・グローバルの会」のこれからの進め方について

会の運営は、2月、3月は、NPO法人産業人OBネットのパネルディスカッショ
ンを含めたやり方で進めていきたい。
4月以降はこの会を「経営における革新の会」とし、NPO法人 産業人OBネットの賛助会員になった企業を中心に運営していきたい。
中小企業の今後のあり方をNPO法人産業人OBネットなどの団体と連携して勉強し、実践していくこととする。

なお今回購入していただいた「ひょうご経済戦略1月号」に掲載の新春座談会「これからの兵庫県経済の展望と中小企業の進むべき道」の記事を是非読んで欲しい。

2.日本経済の現状と中小企業を取り巻く環境

現在日本経済は六重苦を抱えている。すなわち「円高」、「高い労働コスト」、「電力不足」、「地球温暖化」、「TPP問題」、「高い法人税率」の6つである。

更に貿易収支は31年ぶりに赤字に転落した。2015年には14兆円の赤字になるといわれている。貿易総額も80兆円台に減り、韓国の1兆ドル超に追い越された。
日本国債は、現在は95%は国内で購入されているが、これも今後続くとは思えない。
海外資産は250兆円あり毎年16兆円の利子、稼ぎが入ってくるが、諸外国の経済停滞に伴い目減りしてきている。国内資産の1400兆円も同様に減少している。
こう見てくると日本国内の経済状況は、マイナス要因ばかりであるこれに比較し、お隣の韓国は円高ウォン安の影響でコストがリーマンショック時の半
値となり、造船、自動車産業は、北米でトップになり1兆ドルの輸出を達成、日本の人口の3分の1の国が大企業、中小企業とも頑張っている。日本は物づくりでも韓国にやられている。
中国も従来のローテクでなくハイテクの分野で発展している。
中国の賃金は上昇しているので、やっていけない企業は出ていてくれとまで言われている。

3.中小企業の進むべき方向

このように国内での仕事は減っていき、国内で消費するものだけしか生産できなくなる。そのために海外に出て行く企業が多くなっており、出て行けない企業はどうするかが課題となる。
最近の中小企業の取り組みを,2‐3あげたい。

①「21世紀物づくりネット」が平成23年12月に設立され、関東、新潟、長野などの広域ネットで中小企業の海外進出の課題に取り組み始めた。

②また愛知県では「トヨタが日本にいなくなったら」との前提での勉強を始めた。これはトヨタの下請け、孫請けが置いてきぼりにならないための検討会。

③浜松市でも10社で協同組合をつくって、インドネシア進出のための現地訪問を実施している。

私の考え方は、日本国内の物づくりの仕事は必ず減る。これからの市場は海外しかない。また海外から完成品が入ってくる。これまでの国内でアセンブル して製品にするということも減ってくる。日本国内では日本で消費するものしか生産しないので生産量は落ちてくる。今後は中小企業が海外に投資し、市場をつ くっていく時代である。しかし中小企業がいかにして海外進出に対応していくか、これが課題だ。
このことは製造業だけでなく、サービス業、食品、流通にも当てはまる。その課題に対応するためにNPO法人 産業人OBネットなどの企業OBの力を借りることが大切である。
本日お集まりの「成長期待企業・グローバルの会」のメンバー企業には是非発展していって欲しいと思う。そのために無駄の排除も必要だが、海外進出戦略が発展のキイになる。少し具体的例を申しあげる。

①「ヤマシタワークス」

社長の右腕の方を派遣して人材育成をやった。7年前にタイに進出したが、先々を読んで対応した。企業がしっかりしているからコンサルタントが意識改革、人材育成に成果を挙げた。「糠に釘の企業」ではだめだ。

②「されだ精密」(姫路)

5-6年前に企業を改善できるコンサルタントの先生を紹介したが断られた。
無理やりに会わせた。5回まで県が費用の2分の1負担。元NTA副社長のさなみ氏であったが、その後信頼を得て顧問になった。

③その他フジ・データ・システム、ふこくインダストリー、明興産業などもコンサルタントのバックアップ、指導でいい方向にいっている。中小企業は、外部のアドバイザーを受け入れるのは、「恥ずかしい」「自信がない」ということで消極的である。そういう社長は結局損をする。

今から「これからの中小企業の進むべき方向」と言うテーマで、海外進出問題を中心にNPO法人 産業人OBネットの方々にパネルディスカッションをしていただくが、是非皆さんの企業のお役にたててほしい。

パネルディスカッション「これからの中小企業の進むべき方向」

1.パネラーの自己紹介
大森(川重)
昨年会社を退職。45年間海外営業。現在海外のコンサルタントをやっている。
角谷(古野電気)
1990年から海外の購入、販売に携わった。(半導体部品の購入、電子機器の販売)累計で27万マイルフライトの経験あり、世界各国を駆け回った。その後中国の市場展開、特許のしくみのデザインを手がけた。

梶原(NCR,シスメックス)
NCRでは26年間サービス業務、シスメックスで医療用分析装置の開発。現在高槻市のプロジェクトで、産学マッチングコーディネーターをつとめている。

佐野(三洋電機)
1昨年9月退職。商品開発から販売までの技術マネジメント。生産革新、サプライチェーンマネジメントもやった。

野田(川重)
アメリカ駐在30年間、オートバイの販売、あとの10年は本部で販売企画国際化、マーケティング、経営が得意分野。

2.中小企業への提言
大森:どこに出るかは米、欧州はだめ。アセアンに一本化したほういい。やり方は、現地の見本市(展示会)を活用する。現地に乗り込んでプレゼン、面談。メーカー、物流、商社などすべてに会える。
例としてバンコクで医療機器の販売活動やった。ブースを借りて招待状、メールを発送。代理店も探した。メールをもらって、そのあとメールでコンタクトし、取引の端緒をつかむ。

角谷 : 吉岡総括の話で、日本国内に仕事がなくなると言われたが、技術面から本当にそうか疑問を持っている。

スイスでは精密機器関係は、海外に出ない。開発、物づくりは国内、量産は海外。また日本の中小企業はローテク、アナログのところも多い。技術の棚卸をして具体的にどこに強みがあるかチェックすることが
大切。

梶原:シスメックスは、10年前に国際試薬と合併。売上も450億円→1100億
に伸ばした。装置の開発、組み立ての物づくりは国内。試薬生産は海外。売上の70%は海外市場。一方島津製作所の売上は超低空飛行。何が違うのかを考えてみると経営者の考え方、上層部の姿勢が違う。その結果社風が一方は積極的で走り回る、他方はどんよりということになる。

佐野:先日大阪の中小企業17社訪問した。そのうち元気のいい会社は「危機をチャンス」にして変化に対応し、持続的に成長している。「戦い方」「ポジショ ニング」「方向性」が明確である。優れた中小企業は、「グローバルニッチトップ」になることを目指すべきではないか。これからはスピードが必要。我々 NPO法人 産業人OBネットと連携してスピードをつけよう。
野田:海外進出の是非を論ずる時期は終わった。機会を見て絶対に進出すべき。
進出したときの注意点は、まず日本と他の国は違っているという認識が大切。日本の常識は外国の非常識。その逆も真なり。その国で芽生えた文化、いわゆる異文化の中で外国人と仕事をするという自覚が必要。

YESとNOの使い方も全く違う。話を聞くときにうなずくのは誤解を招く。外国でのルールの理解が重要になる。契約、行動も慎重に。契約書で日本では「疑義があればお互いに誠意を持って解決する」という条文があるが、外国では苦しいけれど「疑義があればそ
のことをしっかり条文に書く」ことをやっておく。

また現地に詳しい商社や元駐在した人の活用が原則。進出したはじめのうちに相手に対し、だめなら撤退するとはっきり言うべき。

日本の本社が日本の尺度で判断するのはまずい。現地の事情を知らない判断が事業の成功を阻害する。

吉岡:角谷さんが先ほどスイスの話をされたが、私も日本はスイスと同じで、開発は日本で、量産は海外でということでいいと思う。

大森:六甲エンジニアリングは、10 人足らずの会社であるが、冷凍車などを見本市に
出して成功した。市場はアジアで動いている。

佐野:持続的に成長している中小企業も多い。3 年後を見据えた対策を今の内にやっておくことが大切。無駄を省いた経営の見直し、自社技術の開発、自主技術の棚卸・整理などである。また数社集まればリスクが減少するので、中小企業同士が連携するのもよい。

野田:六甲エンジニアリングの社員の話では、インドネシアの人は「YES」は首を横に振るそうだ。文化の違いでとまどうことも多いが、「井の中の蛙」にならず市場をアジアに定め、戦略を立てること。

角谷:ヨーロッパから入ったISOのルールは、失敗。イギリスでは物づくりの技術はは廃れた。日本はやはりQC。また技術のセンターは日本に残すべきだ。

3.質疑応答
村田:自分はISO認証コンサルタントであるが、ISOは、経営そのものの仕組み(会場) を整理することにある。失敗と言われたが、そのような仕組みなのだ。例えば社長(経営陣)、製造、技術開発などの役割でどこか抜けていないかが、検証できる。

山下:小零細企業で海外に投資する金額はどのくらいが妥当か。

(会場)
1 億円は出せない。3000 万円、5000 万円で海外進出が出来るのか。

吉岡:10 社くらいで協同組合をつくって、資金を出し合った例が浜松市にある。

角谷:3000 万円とした場合、3 分の1でまず展開の足がかりをつくる。資金が底をついた段階で撤退を考えればいい。まず「あわてない」、「あてにしない」、「あきらめない」「あなどらな い」などの心構えも大切。最初に撤退するための条件をきちんと決めておく必要がある。

大森:相手方も小零細企業をさがす。釣り合いのとれた相手方とはうまくいくものだ。

梶原:先ほどシスメックスと島津製作所の風土の違いを言ったが、これはトップが、強い信念、明確な意志のもとでスピードをもって行動できるかによる。トップの目の色を見ればその企業の風土がわかる。

大島:中小企業は経営者のウエイトが、高い。熱意、信念、行動力、率先垂範が社員

(会場)
影響する。そして社員の主体性をどう育てるか。大企業では同期の競争があり、切磋琢磨する機会があるが、中小企業では人材が少なく、人材育成の仕組み作りが必要である。(?)

弊社は兵庫県の山奥にあり、関西空港の場所も知らない社員が多いが、どのよ(会場)うにして社員に海外に行かせる教育をしたらいいのか。

角谷:自分の経験では、機械のトラブルでソ連に行ったが、最初は商社などもついてくれたが、2 回目はロシア語、英語もわからずモスクア、レーニングラードに一人で行った。チャンスを与えて経験させることしかないのでは。

佐野:海外要員の教育は、OJT。現場に投げ込むのが一番よい。

野田:正道は、おっ放り出して失敗させ、経験させるのがよい。さらにNPO法人 産業人OBネットのアドバイザーがマンツーマン教育する方法もある。

丸本:角谷さん、技術の棚卸のやり方を教えてください。

(会場)
角谷:まず一つの製品を部品(パーツ)ごとにばらす。そのパーツのつくり方を技術に展開する。他ではつくれない技術をさがし、この技術のポイントを1つで表す。
自動車車メーカーに部品を納入した例では、その部品の中で相手からもらえる技術と自分たちで加える技術を明確にする。上記では半導体技術が固有技術だった。
以上