中国事業リスクの本質-文明の衝突

PO産業人OBネット主催第7回講演会

講演会内容

<中国事業リスクの本質-文明の衝突>
DSC02984.JPG今年度第2回目の講演会は、中国ビジネスの専門家である株式会社 貿易人 代表取締役 馬場正修様をお招きして「中国事業リスクの本質-文明の衝突」というテーマでご講演をいただきました。

1.文明の衝突と事業化に当たっての情報収集と現状分析

「文明の衝突」という言葉は以前には「文化の摩擦」を使っていた。日本は、国と文明が一致する単一国家に対し、中国は多種多様な国家である。今回はその違いを際立たせるため、サミエル・ハンチントンの著書名である「文明の衝突」のタイトルを使わせていただいた。

2.中国人の人間関係の特徴

中国人の人間関係、行動様式は、親疎に応じた二重倫理が見られるのが最大の特徴である。
相手が「自己人(ツーチーレン)」か「外人、外他人(ワイレン)」かによってその行為行動、反応が全く異なる。「自己人」と「外人」の中間は、「熟人 (シューレン)」。その行動様式は「外人」には「兵法的領域」が、「自己人」には「儒教的領域」が適用される。関係の濃淡は外人→熟人→自己人(一家 人)・結拝(義)兄弟の順で、「利益、得」によって関係が深化し質的転換が起こる。まず我々外国人は、基本的に中国人にとっては「外人、外他人(ワイレ ン)」、赤の他人である。「熟人(シュウレン)」は利害を超えた深い関係への深化の途上にある中間的関係であるが、中国人にとっては複雑、悩ましい領域。 「自己人」とは、利害を超え深い段階に入った信用・安心が保証される関係。裏切れば厳しい制裁(死)があるが、これは日本の「村八分」以上の制裁である。 日本人は「組織」で、中国人は「人間関係」で仕事をやる。

3.中国の古典について

中国を理解するためには古典を読み、学ぶ必要がある。孫子、老子、孔子や道教、儒教は経営の参考になり、中国ビジネスを進める上で、その考え方を活用することが必須である。

4.日本人と中国人の比較

日本人は、家族より会社重視、会社のために働き、皆で協力し仕事に集中する。事業は長子相続。一方中国人
は、会社より家族重視、ボス(自己人)のために働き、各人への仕事の割り振りと分業、一度に多くのことをこなし気が散り仕事は中断しやすい、同族、ファミ リーの維持のため事業の均分相続となっている。 日本は単一民族、単一言語、単一文化、以心伝心、阿吽の呼吸で理解し合える信頼社会。対して中国は56民 族が共存する多民族、多言語、多文化な複合民族国家。そのうち漢民族が95%、漢語も7種類あり、相互に意思疎通ができない。各地域は侵略と戦乱に明け暮 れ、征服と同化による混血が行われ、基底には民族的怨恨を内包し、決して1つに溶け合った社会ではない。

5.中国の独特の思想と考え方

(1)中国の徳
陽徳といわれるもので、慈善事業を大いにアピールして企業グループの名声の拡大・安全の確保に利用する。
他方日本は陰徳で北京空港は日本からのODAでつくったが、そのことを表す表示板もない。

(2)人情(レンチン)
自己からの距離(親疎の度合い)によって他者を位置付け、その距離によって自らの行為を決定する心理的メカニズム。関係の親疎を測りながら関係の深化に資する行為には次の3パターンがある。
①「請客(チンカ)」宴会などによる接待、もてなし 
②「送礼物(ソンリウ)」贈答行為 
③「佣金(ヨウチン)」・「回扣(ホエコウ)」リベート、キックバック、金銭的賄賂。これらを手段として関係を確認し、円滑にし、深める努力をする。

(3)面子(ミエンツ)
社会的自我、他人との関係の中にある自身の評価、位置付けである。自尊心が強く自己中心的で自己の立場を最重視する性向がある。「面子を潰す」ことは、許されない自尊心高き民族で、中華意識が強い。
(4)怨恨(エンフン)
潰された「面子」により、受けた恥辱に対する恨みは深く、晴らすまで忘れない。面子にこだわり、侮辱、屈辱と思い込むと根に持つ、必ず恨みは晴らす。執念深い。
(5)「合股(股=株)」「つながりの公」の社会
 中国では、「私」と「私」の繋がったところに「公」が成立。そのネットワークが公的な社会。「私」は「公」中に包摂され、公私の峻別はない。そしてこの ネットワークにおける「関係」の維持が安全保障としてすべてに優先される。一方日本では公と私を峻別する。「滅私奉公」「無私の公」を基本とし、「公」す なわち集団・組織への忠誠が社会倫理の基本となる。

≪中国ビジネスでのポイント≫ 

■重視される「中間人」の存在
自尊心の強い中国人は直接「外人」には近づかない。リスクもあり、「面子」が保てるかどうかわからないから
である。「外人」との関係構築の時は、事前に調査し、「「自己人」の領域にある第三者を介して近づく。利害が
もつれ、もめた時はこの「中間人」に調停を頼むことになる。
■中国人の戦略的思考の源泉としての孫子の兵法と三十六計(謀攻)
兵法的思考は、低信用社会、多面な「外人(ワイレン)」領域を構成する社会の中国に発達した。この「兵法」は自らあるいは双方のダメージを極力避け、戦う ことなく計略、智謀により勝利を得るための負けない思考の体系である。中国人の日常生活には、このような兵法的思想と行動原理が根付いている。

                                    (久留島 正)

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