パネルディスカッション「中小企業が真に求めるもの」

NPO「産業人OBネット」第2回研修会の詳細報告 パネルディスカッション

「中小企業がこれからの厳しい時代に生き残るために真に求めるものは何か」

ph1野田(浩志)理事長のあいさつに続き、来賓の神戸商工会議所の藤田主任調査役から祝辞をいただいたあと、新現役チャレンジ支援兵庫事務局ナビゲーターの後藤氏(本会事務局長)から基調報告がありました。
藤田主任調査役並びに後藤ナビゲーターからは、神戸商工会議所がNPO・産業人OBネットと兵庫県技術士会に企業ニーズ調査を委託した経緯とその実績が報告され、NPOの果たす役割の大きさと期待が示されました。

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パネルディスカッションの内容は以下のとおりでした。
(ご発言の内容は編集者の一存で省略あるいは付加している部分がありますが、ご容赦ください。)

コーディネーター:大島 啓生 氏  中小企業診断士 改善実践考房 主宰
パネラー    ○伊吹 清孝 氏(元 川崎重工 汎用機カンパニー)
        ○藤田 佳丈 氏(元 姫路商工会議所)
        ◯島田 宣義 氏(元 川崎重工 機械ビジネスセンター)

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大島)
本日コーディネーターを務めさせていただく。地元某鉄鋼会社で機械の設計をしていた
が、今は業務改善コンサルタントをしている。中小企業が真に求めるものは何かという旗が上っているが、こうだと言える人は少ない。
今日は、企業ニーズ調査で感じたことを語ることにして、その中から何かをひき出していただきたい。テーマして次の四点を考えている。

第1:成果として引き出せたものはどんなニーズであったか?
第2:ニーズの引出しにどのような困難があったか?それをどのように克服したか?
第3:調査を通じて自分は何を得られたか?
第4:調査活動、NPO活動についての提言

<成果として引き出せたものはどんなニーズであったか?>

(大島)
4件(3件がメーカ、1件がソフト開発会社)調査した。人材ニーズはデザイン関係が2件、営業人材が1件、受注から納品まで管理できる人材が1件だった。特徴的なのは4件の内2件もデザイン関係だったことで、時代の特徴を反映していると思われる。

(伊吹)
オートバイ、水上オートバイ等の設計、品質保証を経験してきた技術屋。自分の場合は調査ではなく支援に入った経験をお話したい。産業人OBネットを通じ て、住宅建材のプレス加工を行っている90名規模の会社に技術顧問として入り、3か月半が過ぎたところ。応募の動機は、100%親会社に依存していた企業 が付加価値の高い自社製品を持ちたいと考えていることを知り、お役にたちたいと思ったこと。これまでに経験していない新しいカテゴリーのものに取組むこと に惹かれるものがあり、アメリカや中国で恵まれない環境のもとでR/Dを経験してきたことも役に立つかもしれないとも思った。

(藤田)
姫路商工会議所を定年退職して6年。昨年夏同窓の友人の勧めでこの事業に参画した。在職中は商業関係の企業の相手が多かったが、今回は製造業の企業も対象 とした。調査は何回も経験しているが、この調査は経営トップに直接話しを聞く必要があり、しかも聞きっぱなしで済むものではないので、6年のギャップを埋 めるため表敬訪問から始めなければならない苦労があった。11月までに友人とともに11件の調査を行った。
7社が製造業、4社が卸業であった。後継者未定という会社が多かった。調査をしてニーズを聞いたがそれに対するアクション、フォローが残っていると認識している。

(島田)
ブロア、コンプレッサーなどの流体機械の設計をしていた。2件の調査を行った。加古川の食品関係の会社で450人規模。
初めはニーズは特にないということであったが、いろいろ話しているうちに、近々定年を迎える人が多く、パンの製造技術者、衛生管理者を確保する必要がある ことが分かってきた。もう1件は西神ニュータウンの企業で、社内文書管理をできる人が必要ということだった。ただし、この企業の場合は、外部人材でも雇用 とする方針をとっている。

(大島)
皆さんの体験を伺って分かることは、人材ニーズを聞いてもすぱっと答えてくれる経営者はいないということ。そこを苦労しながら聞き出してきた様子が窺える。

<ニーズの引出しにどんな困難があったか、それをどのように克服したか>

(島田)
1件目の食品会社の場合、面談の初めではとくに外部人材のニーズは無いということだった。あらかじめ産業人OBネットから「調査の手引き」をもらっていた ので、それに沿って調査の背景等について要点を説明した。相手の立場に立って、相手の役にたつことだということを思わせることが大切と感じた。
相手の乗ってきそうな話題を切り出し、例えば関連会社についても質問し、そこでの
人材ニーズの必要性を調査してもらうこととした。訪問は一回きりではなく本人による
後日のフォローが大切と感じた。

(藤田)
商工会議所マンとして長年、企業本位で活動してきた自分としては、退職後6年もたって何しに来た?と思われることを懸念し、気を遣った。
人材ニーズ調査と言うと、ハローワークと間違えられたり、シルバー人材の紹介と思われたりすることがあった。「調査の手引き」の中に活用事例が載っている ので、どこの会社を訪問するときも必ずこれを用いて説明し、ハローワークやシルバー人材との違いを理解してもらった。調査は相手の役に立つものでなくては ならない。

(伊吹)
私の場合は調査とは違うが、マッチングが成立した理由を考えてみると、経営者の熱意が伝わってきたことだと思う。工場を見ると、ポテンシャルは結構高いも のがあると感じたし、自分の経験してきたものとは業種こそ違うが、形体的には近いものも並んでおり、親しみを覚え、自分でもできそうだと感じた。仕事を初 めてみると、面談時には予想して無かったことが発生した。ひとつは絶対的なマンパワーの不足。リーダーになれそうな人もおらず、実務を離れて長くCADを 使ったことも無い私に開発の実務を丸投げしたいような雰囲気だった。マンパワーを生み出すために、業務改革をする必要があることを提言しているところであ る。

ふたつ目は製品企画力の不足であった。何故、何を開発するかについて詰めができていない。面談時に聞いた具体的テーマにしても、親企業の担当者がちょろっ と言ったことだったり、思いつきの域を出ないものだった。製品企画のための情報収集力も不足していて情報収集の仕方から教える必要がある。
自社技術だけで解決しようとしているので使える技術の範囲が狭く、競争力が無い恐れがある。自社技術だけでなく他社の技術も借りる協業の必要性を話し、進展はしてないが考え方は理解されてきていると感じている。

個人的に悩ましいのは、早く成果を挙げなくてはならないということである。開発は大げさに言えば企業の文化を変えるようなものだが、あせらず、諦めず取り組んでいきたいと考えている。

(大島)
私が調査した案件でも経営者自身が人材ニーズに気づいてないことが多かった。そこで、まず、経営者自身に経営課題、戦略課題を自覚してもらうために質問シートを作って課題を明らかにし、人材ニーズを浮き彫りにする方法を採った。

<調査を通じて自分自身で得たものは何か?>

(藤田)
商工会議所時代、地域を育て企業を伸ばすのが仕事であった。調査のやりっぱなしではなく、調査報告書は必ず面談相手に案を見せて了解をもらった。この調査を通じて改めて感じたのは信頼関係の重要さ、礼を尽くすことの重要さであった。企業は人なりということを勉強した。

(島田)
自分自身が得たものというよりも調査に当たって見て知ったことがある。ひとつは、課題解決のためにコンサルやアドバイザーの助けを一時的に借りるというケースの他にまったく単純作業のために人材を必要としているニーズもあること。
もう一つは、実戦部隊として直接雇用したいという企業もあること。その会社の定年後再雇用の場合の報酬とも関係があるのかもしれないと思った。

(伊吹)
企業に支援に入る際には、自分の経験してきたことと異業種であることはさほどの問題ではないことを知った。むしろ、違う角度からみることができて新しい発想ができる。
例えば、色々な補助金制度の活用に際して、産業人OBネットの人材が申請書類作成等でおおいに役にたつことができると感じた。
企業OBに対して、健康で意欲さえあったら飛び込んでみなさいと自信をもって勧めることができるようになった。

(大島)
調査を機会に、長いこと疎遠になっていた企業と再び縁ができた。相手の役に立たなくてならないという観点から質問シートを作ったことは先ほど述べたが、こ れを使用して対話を重ねているうちに、自分自身も気づくことが色々あり、また企業経営者自身も課題に気づいたこともあり、この点では役に立てたと思う。藤 田さんご指摘の相手企業にも役に立つ調査でなくてはならないという視点は重要だと感じた。

(大島)会場からも調査に参加された方にお話しを伺いたい。野田功さんにお願いする。

(野田功)
昨年2月定年退職。産業人OBネットを紹介された。生産管理、調達管理を経験。
加古川のベルトコンベア会社を訪問したところ、人材は新入社員で対処しているので今ニーズは無いという反応だった。そこで「調査の手引き」を使って説明し て次第に理解してもらった。そのうちに、設計者が自分で外注先に注文する方式なので担当毎にばらばらになって困っていると聞き、そのような場合に産業人 OBネットの人材が役にたつと説明したところ関心を示し社内で検討してくれることとなった。

その後、経済状況の急変もあって、すぐに人材を求めてくることになりそうもないが、今後の可能性を見ている。

<調査活動や産業にOBネットの活動についての提言>

(大島)
人材問題はOBに限ってない。OB人材という枠を外してアプローチした方がよくはないか。「調査の手引き」の中に勉強できるような参考資料を入れてはどうか。
教育能力をもった会員が多いと思う。教える能力を事業化できないだろうか?たとえば、中小企業の社員教育を専門企業に依頼すると高額である。
それをNPOで低価格で提供すれば中小企業も助かるのではなかろうか。

(伊吹)
調査は活動のきっかけ。それで終わらずにフォローが大切と思う。中小企業が困っていること、新しいことを始めようとする場合、人材ニーズは必ずあるはず。 経営者のホンネとしてお金の問題がある。面談のときでも金の話はダイレクトにでにくいかも。NPOが安くできることを示すのがよいのではないか。
グローバル化は大企業でも失敗はたくさんある。中小企業では何が問題になりそうなのかも予想が立てられてない。NPOには海外経験者が多数いるはず。そのような人たちによる相談窓口ができたら良いと思う。敷居を低くして相談しやすくするのがよい。
公的機関は敷居が高いと思われている。

(藤田)
「調査の手引き」を充実させていったらよいと思う。NPOの体力と知力をどのように維持するかが問題だろう。急激に拡大するのも問題があるだろうが会員数を着実に増やすことも重要と思う。また窓口を週に1回、月に1回など設けることも良いだろう。
相手の社長からどういう人が来てくれるのか?人材データバンクがあるのか?などを聞かれた。

(島田)
「調査の手引き」を充実させると良い。多くの会員がニーズ調査を体験することが意識の高揚につながると思う。「調査の手引き」を使えばNPOの会員ならだ れでも調査はできると思う。会員にはぜひ参加を勧めたい。調査報告書を会員ならホームページ上で閲覧できるようにならないか?

(赤星)
企業に送った資料がキーマンに届いてなかった例があったりして調査員には御迷惑をおかけしたと思う。改善すべき点をご指摘願いたい。

(藤田)
相方と調査以前にずいぶんすり合わせをした。文書の宛先は、少なくとも肩書プラス名指しであってほしい。NPOから公文書を出してもらったのは良かった。

(大島)
相手の企業に全く知りあいが無い場合とある場合とで対応を変える方が良いかも。
最後に野田理事長から次のような総括の挨拶がありました。
企業が真に求めるものを特定するのはむつかしいという実感をもった。
時代の流れを感じ取りたい、製品であれ、市場であれ、かくありたいという将来の夢を心の中に経営者はもっている。承継問題もある。公的支援を活用したいと いう気持ちもある。内心は人材が必要と思っている。しかし、人材で困ってますか?と聞かれれば、困ってないと答える。実は、あるのが現実で、それを引き出 すには人間関係の確立が重要である。

それには、我々は一体何者か?を明らかにする道具立ての取り揃えも必要だと思う。
それによって経営戦略について経営者と話し合えるようになり、人材ニーズの引出しにもつながるものだと感じた。

調査が調査に終わらず、結果的に人材ニーズに応えることができた、中小企業の支援ができたという状態になりたい。

来年度もこの事業が継続されることは確実と言われているので、本日いただいたご提案を検討して、道具立てを用意して、我々ができることを一歩一歩進めていきたい。
できるだけ多くの会員が多くの企業と接触して支援の輪が更に広がることを期待したい。

このあと続いた懇親会でも活発な質疑や意見の交換があり、盛り上がりました

このあと続いた懇親会でも活発な質疑や意見の交換があり、盛り上がりました

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